電子辞書《英語重視タイプ》・メーカー情報
(2014.7.19現在)

【参考】過去(2013年)のメーカー情報はこちら

電子辞書を比較する上での基本的な知識とメーカーごとの製品の発売の傾向をまとめました。たくさんあってなかなか区別しにくい個々の電子辞書を比較する上での参考にしてください。


2014年の業界と製品のトレンド

2014年は、比較的、変化のない安定した年だ。
2014年・春モデルとして新シリーズを発売したのはカシオとシャープ。セイコーインスツルとキヤノンは、春の入学・入社シーズンも2013年発売モデルを店頭では推していた(ただし、セイコーインスツルの場合、2013年後半に発売の「ディファイラー」ブランド新製品が春モデルを意識したものだったかもしれない)。
電子辞書の価格もだいぶ、メーカーや機能による違いがなくなり安定してきた。メーカー各社の普及機は2万円台で横並び。多コンテンツ搭載上位機種3~4万円台、英語学習向け3万円台、高校生向け2万円台。5万円を超すモデルはほとんど見かけなくなった。1万円以下のモデルは別のマーケットに移動した(後述)。

今年の電子辞書トレンドのひとつは、大型スーパーや家電量販店で、1,000円~2,000円の電子辞書がワゴンセールだ。
「国語辞典」「和英・英和辞典」「中国語辞典」「韓国語辞典」など、コンテンツを絞った単機能電子辞書が、大型スーパーや家電量販店において1,000円~2,000円で売られはじめた。テキスト2行表示程度のディスプレとキーボードで、語彙数の少ない辞書(コンサイス辞書等)を搭載した電子辞書が安価で売られている。

注目の新製品は、「PW-SB1」「PW-SA1」「PW-SH1」「PW-SJ1」などのシャープ新ラインナップ。キーボードを背面に隠し、ディスプレイとタッチペンだけでタブレットPCのような使い方もできる新製品。電子辞書の利用シーンが広がるイメージがある。

シェアNo.1、業界をリードするカシオは、例年どおり2014年春モデルとして新シリーズを発売した。今年の新シリーズは、型番「XD-U」ではじまるモデル。2013年春モデル「XD-N」シリーズは、型落ちとなった。
「XD-U」ならではの大きな機能追加はないが、辞書選択画面をはじめ、ユーザーインターフェイスがよくなっている。搭載する膨大な量のコンテンツを、より利用しやすくなっている。学生向けには、デジタル単語帳(EX-word with)との連携をアピールしている。

セイコーインスツルは、相変わらず、英語重視電子辞書メーカー、となっている。セイコーインスツルの電子辞書は、おおむね搭載コンテンツが英語コンテンツに偏っている。シニア向けやホームユースなど、オーソドックスなタイプの電子辞書はほとんどない。
2013年後半、「ディファイラー」ブランドの新シリーズにリーズナブルな「ベーシックモデル」が発売(DF-X7000)された。機能性の高い「ディファイラー」ブランドの電子辞書はそれまで平均的な電子辞書よりもだいぶ高かったが、2万円台で手に入るようになった。

メーカー別の製品開発の傾向

カシオ
「エクスワード」ブランドを展開。電子辞書のシェアNo.1の地位を今なお維持している。製品ラインナップの充実度も他社を圧倒。 電子辞書マーケットにおけるトップメーカーであり、購入にあたって、どの機種も機能面やコンテンツのクオリティは心配する必要はまずないだろう。 「迷ったらカシオ製」と思ってもいいほど、電子辞書はカシオ製を買っておけば間違いはない
No.1メーカーだけに、オーソドックスで最高水準の機能性とコンテンツのモデルを、英語学習者・ビジネスマン・高校生・中学生・シニアなどそれぞれのターゲットに提供している。 価格も他社競合モデルの中で最低水準。低価格化においても、電子辞書メーカーをリードしている

カシオは、毎年1月~2月に、その年のラインナップを一新する。2014年は、製品番号「XD-U」ではじまる新シリーズを投入。なお、2013年は「XD-N」、2012年は「XD-D」ではじまる型番。
「XD-U」ではじまる新シリーズは、昨年度モデル「XD-N」から機能面や新搭載コンテンツにおいて大きな変化はない。
「XD-U」ならではの大きな機能追加はないが、辞書選択画面をはじめ、ユーザーインターフェイスがよくなっている。搭載する膨大な量のコンテンツを、より利用しやすくなっている。学生向けには、デジタル単語帳(EX-word with)との連携をアピールしている。

近年の傾向としては、ラインナップの中でもビジネスマン向け、英語学習者向け、高校生向けなど、ユーザーの多いセグメントにはカラーバリエーションを用意して価格を抑えた普及機を投下。競合他社を寄せ付けない。
上記の業界トレンドで、「電子辞書の価格もだいぶ、メーカーや機能による違いがなくなり安定してきた」と紹介したが、No.1メーカーの影響が大きい。 普及機2万円台、多コンテンツ搭載上位機種3~4万円台、英語学習向け3万円台、高校生向け2万円台、といった価格相場は、カシオがリードしてできあがっている

これも、ここ数年の傾向となっているが、春モデルで人気のあったモデルは、夏前頃に製品の型番を少し変更して後継機を発売する傾向にある。売上のよかった機種を増産するのではなく、搭載コンテンツの核となる部分はそのままでコンテンツを追加するなどのモデルを発売する。
例えば、2012年における、以下はそうした流れによるものだ。矢印の元が春モデル、矢印の先が後継機。ビジネスモデル「XD-D8500」→「XD-D8600」、生活・教養モデル「XD-D6500」→「XD-D6600」、高校生向け「XD-D4800」→「XD-D4850」、中学生向け「XD-D3800」→「XD-D3850」。
2014年モデルの「XD-U」シリーズも夏前頃にアップグレード製品の登場が予想される。


シャープ

電子辞書マーケットでカシオを追う。
王道を進むカシオに対抗して、シャープは、新機能を搭載した電子辞書を真っ先に投入して逆転を狙う。 これまでも、ワンセグ搭載電子辞書やポケットタイプ電子辞書など電子辞書に新機軸を打ち出して、斬新な電子辞書を発売している。

2014年、他社メーカーがあまり新製品を投入しない中、シャープは「PW-SB1」「PW-SA1」「PW-SH1」「PW-SJ1」などの新ラインナップをリリース。 キーボードを背面に隠し、ディスプレイとタッチペンだけでタブレットPCのような使い方もできる新シリーズを発売した。電子辞書の利用シーンが広がるイメージがある。

「PW-SB1」「PW-SA1」「PW-SH1」「PW-SJ1」など新ラインナップは、インターフェイスも考えられており、非常に使い勝手がいい。100以上搭載するコンテンツを利用しやすくなっている。
これまでシャープの電子辞書は、デザインにもこだわったものが多い。新ラインナップは、キーボードが360度回転するなど機能性を重視したデザインとなっている。ツールとしてのデザインが重視され、やや従来タイプの電子辞書が持つ高級感は薄れている。 特に高校生向け・中学生向け「PW-SH1」「PW-SJ1」はチープな印象。購入前に実機を店頭で確認したい。


SII(セイコーインスツル)

競合他社が搭載コンテンツのバランスを考えた多コンテンツ型の電子辞書を続々と投入する中で、あえてバランスを考えずに英語コンテンツに偏った製品ラインナップを続けている。
上級英語学習者向けやビジネスの現場で英語が必要なプロフェッショナル向けの電子辞書はセイコーインスツルの独壇場だ。
2013年登場した「DAYFILER(デイファイラー)」新ブランドをアップグレードさせた製品群を発売している。 ディファィラーは、無線LAN機能内蔵。また、フリックスクロールやピンチによる拡大・縮小も可能なカラータッチパネル搭載。Wi-FiモデルのタブレットPCやスマートフォン、電子書籍リーダーにも似た機能性・操作性が特徴だ。 店頭で実機を触ると分かるが、操作性は抜群。

2014年の主力製品は、2013年後半に発売した「DF-X10001」「DF-X9001」「DF-X8001」「DF-X7000」。 特に注目は、リーズナブルなディファイラー「DF-X7000」。これまでディファイラーは、平均的な電子辞書よりもやや価格帯が上だったが、「DF-X7000」は2万円台だ。


キヤノン

2014年、キヤノン電子辞書は、ここまで新製品のリリースがない。2012年春モデルの高校生向け「Z410」は、まだ人気があるがネットでは在庫が少ない。
最近では、中国語・韓国語の学習者や旅行者向けの電子辞書に力を入れつつある。

電子辞書ではないが、キヤノンは、低価格デジカメ市場から撤退するそうだ。新製品リリースもないし、キヤノン電子辞書サイトを見ても、最近はあまり電子辞書に力を入れていないことが明らかだ。電子辞書マニアとしては、キヤノンのマーケットからの撤退が心配される。